AHP(階層分析法; Analytic Hierarchy Process)の分析の流れ

AHPで選択(意思決定)をする流れを「夕方,お腹がすいたとき,立ち寄るお店の選択」を例に,説明いたします. このページを見ていただければ,直感的にAHPがどのようなものか理解できると思います.

AHPとは,図1のような階層図を作成し,各項目について図2のような一対比較を行い,数値化し,図6のような総合評価値を求め,これを元に意思決定をする手法です.

このページは,Excelで学ぶ AHP入門(第2版)で配布しているファイルを使って計算していますが,全体の流れは,このページの説明で理解できると思います.

階層図の作成

まず,選択対象の候補(代替案)とその選択をするときの評価基準を決めます. それを図1のような階層図で表します.

階層図
図1: 階層図の例

この例での意思決定者は,大学生で,大学の帰りにお腹がすいたときに,どの軽食を取ろうか考えている(目的)とします. 評価基準は3つあります.

おいしさ
意思決定者の主観で決めることにします.
費用
安ければ安いほど,よいとします
満腹感
量が多ければ多いほどよいとます
代替案は,よく行く4つのお店(架空)のいつも食べるメニューとしました.
専修庵 お汁粉
甘味処.とてもおいしい.700円 とてもおいしいが少し物足りない
来々軒 唐揚げラーメン
ラーメン屋 味はまあま.650円 ボリュームは十分すぎるくらい
コンビニ ソフトクリーム
180円 味はまあま. 少量
学食 カレー
200円 おいしいとは言えない 量はちょうどよい

これから,「一対比較」という作業をしていき,図7のような表にまとめていきます. 本書での手順では,記入していく表を作成しておきます. 作成する手順は,動画:総合評価値計算表の作成を参照してください.
また,階層図の作成方法は,動画:階層図の作成を参照してください.

評価基準間の一対比較

どの評価基準をどのくらい重要視しているかを求めます. AHPでは,図2のようなアンケート用紙を作成し,それぞれの評価基準のどちらをどれくらい重要視するかを回答していきます.

基準間の一対比較
図2: 基準間の一対比較(赤丸は,回答者が手書きでなどで付ける)

一対比較では,「おいしさ」VS「費用」,「おいしさ」VS「満腹感」,「費用」VS「満腹感」のように,評価基準のすべての組み合わせについて,どちらをどれくらい重要かを回答していきます. 図2の各行について,意思決定者(回答者)は,自分の希望に従って,赤○などの印を付けています.


本書のファイルを使って,この一対比較の用紙を作成する手順は 動画:基準間の一対比較のアンケート用紙の作成を参照してください.

各基準の重要度の計算

図2の一対比較の回答を元に,各基準の重要度を求めます. 本書では,図3のようなExcelのマクロを使って求めます. 水色の部分に入力して行きます.
重要度の計算
図3: 重要度の計算
  1. B1に一対比較の項目数3を入力します.
  2. C2:E2 に基準名を入力していきます.
  3. D6に,図2の「おいしさ」と「費用」の一対比較の結果を入力します.
    図2では,おいしさがかなり重要に対応する数値(一対比較値)5を選択します.
  4. E6に,左の項目がうんと重要に対応する7を選択します.
  5. E7に,左の項目がすこし重要に対応する3を選択します.
  6. J6:J8に,重要度が表示されます.
結果をグラフにすると,図4のようになります.
重要度のグラフ
図4: 重要度のグラフ

本書のファイルを使って,重要度を計算する手順は 動画:基準の重要度の算出を参照してください.
また,重要度のグラフ(図4)を描く手順は 動画:重要度のグラフを参照してください.

「おいしさ」に関して,代替案間の一対比較と評価値の計算

評価基準間の一対比較と同様に,評価基準毎に,代替案間の一対比較を行います.

まず,図5のように,最初の評価基準「おいしさ」について,各代替案間の一対比較を行います.

「おおしさ」に関する代替案間の一対比較アンケート用紙
図5: 「おおしさ」に関する代替案間の一対比較アンケート用紙

評価基準の一対比較と同様の方法で,各代替案の「おいしさ」についての評価値を求めていきます(図6).

「おおしさ」に関する代替案間の一対比較から評価値の算出
図6: 「おおしさ」に関する評価値の計算から評価値の算出
「お汁粉」が0.58点,「唐揚げラーメン」が0.11点,「ソフト」が0.26点,「カレー」が0.05点であることが分かります.

本書のファイルを使って,評価値を計算する手順は 動画:代替案の評価値の算出(おいしさ)を参照してください.


同様に,「費用」,「満腹感」の評価値を求めていきます. 動画:代替案の評価値の算出(費用)動画:代替案の評価値の算出(満腹感)を参照してください.

総合化とグラフ化

図7のような表にまとめていきます(本書のExcelファイルでは,水色の部分に転記していけば自動的に計算するように計算式が設定されています).

総合化
図7: 総合化(右上は各代替案の評価値,下は総合化)
  1. 評価基準間の一対比較の結果(図3のJ6からJ13)をB16からB25に転記します(コピー&ペースト 値は貼り付け).
  2. 「おいしさ」に関する一対比較結果(図6)をE18からE25に転記します.
  3. 「費用」と「満腹感」についても同様の一対比較を行い,その結果をそれぞれF18からF25とG18からG25に転記(値は貼り付け)します.
  4. それぞれの評価値を各評価基準の重要度を重みにした加重平均を求めます.

図8は,図7の結果をグラフ化したものです.

総合化のグラフ
図8: 総合化のグラフ

今回は,「おいしさ」を重要視たため,「お汁粉」がトップになり,「お汁粉」を選択してみました. お金がなく「費用」を重要視したり,また,お腹の減り具合が大きく「満腹感」を重要視したときは,別の結果が生じると思います. たとえば,費用を重要視したときは「ソフト」,「満腹感」を重要視したときは「カレー」になると思います.


本書のファイルを使って,総合評価値を算出する手順は 動画:総合評価値の算出を参照してください.
また,総合評価値のグラフ(図8)を描く手順は 動画:総合評価値のグラフを参照してください.

各代替案の評価値の比較

各基準での一対比較により求めた代替案の評価値(図6)を比較することにより,代替案や基準の特徴を見ることができます.
図9は,代替案ごとの特徴のグラフで,各代替案のよい点,悪い点を比較するのに使います.
図10は,基準ごとの特徴のグラフで,各基準で,よい代替案,悪い代替案の分析をするのに使います.

代替案ごとの特徴のグラフ
図9: 代替案ごとの特徴のグラフ
代替案ごとの特徴のグラフ
図10: 基準ごとの特徴のグラフ

代替案ごとの特徴のグラフ(図9)を描く手順は 動画:代替案ごとの特徴のグラフを参照してください.
基準ごとの特徴のグラフ(図10)を描く手順は 動画:基準ごとの特徴のグラフを参照してください.



専修大学 商学部 高萩栄一郎
連絡先: takahagi@isc.senshu-u.ac.jp

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